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絵を描く理由


むかし、たぶん30年ぐらいまえ『僕らが旅に出る理由』という歌があった。

忘れかけている歌詞を思い出してみたが、いわゆるそれらしい理由は見当たらなかった(ように思う)。人にもよるけれど旅というのは理由をつけていくものでもないのだろう。

できればネットで調べたり、ガイドブックを読んだりせずに、ふらりと出かけたい。


自由になるための旅に多くのモノはいらない。財布と本、ひと組の着替え、今はまだ出来そうにないがスマホは家に置いていく。

減らせば減らすほど本来の感覚が甦るはずだと思っている。


旅と同じように、そもそも絵を描くのに理由などいらないのではないだろうか。

たぶんいつの頃か、絵を描き続けると決めたのだ。ただそれだけ。


と、カッコつけていってみても続けるには結構なエネルギーがいる。いわゆるモチベーションが下がってしまうということですね。

天から素敵な何かが舞い降りるなんてことは当然ないし。


ただ最近思うに、ひとつのこと(私にとっては絵)をいつもいつも考え手を動かし続けていると、ふと、ひらめき(という言葉が正しいのかは分からない)のカケラみたいな何かが見える、というか感じることがある。

まあダイヤモンドだと思ってつかまえたカケラが、ただの石ころだったことのほうが多いのだけれど、そんな時はすぐに採用せず、自分の内側に静かにしまっておく。そしてそんなカケラ同士が反応するのを待つ。


目に見えるモノはなるべく減らしたいけれど、内側にある、今はよく分からないカケラは大事に取っておこうと思っている。

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